CBA−TDA4W 5型
2.4XGクロスアドベンチャー

 
2012年7月、3型から4型へのマイナーチェンジでは特筆したものを表さなかったエスクードも、5型の登場でSUVのあり方に区切りをつけた。クロスカントリー4WDという旧来の殻を脱ぎ捨て、他社がラインナップするクロスオーバー趣向の、腰高なステーションワゴンに路線を変更したのである。
 カタログモデルはXGのモノグレード、サンルーフやメッキパーツ、撥水シート、ESPなどを標準装備する特別仕様として、サロモンと提携した「クロスアドベンチャー」を同グレードベースに設定した。実質、この2種(カタログモデルでは4AТ、5MТの選択も可能)が、5型の構成。カタログモデルは225/65R17インチのタイヤ・ホイール。クロスアドベンチャーでは225/60R18インチを履いているのも、従前の差別化と同じ方法をとっている。
 今回のマイナーチェンジで最も変化したのは、スペアタイヤの廃止と、それに伴う対策としてパンク修理用応急キットを装備したことで、リアスタイルはあっさりとした。不評であったバンパー左下のナンバープレート位置が、バックドア中央部に移設され、バンパー形状も変更されたが、皮肉なことにデパーチャーアングルの27度という数値に変化はない。
 フロントグリルとバンパーのデザイン、前方への張り出しにも若干の変更が施された。見る角度によっては精悍、角度を変えるとごちゃごちゃしたまとまりのなさが露呈している。
 スズキ自身もスキッドプレートと称しているフロントバンパー下の部材に関しては、SSPPと呼ばれる軽量化ポリプロピレンを着色させたものを採用し、塗装の剥離が起こらない製品技術をアピールしている。この技術自体は、同社の2輪、チョイノリの頃には確立されていたものだと記憶しているが、自動車への採用は初めてだという。
 外観、スペアタイヤ廃止というスタイルは、明らかにオンロード趣向を前面に押し出した演出となったが、カム式LSD(カタログモデル)とセンターデフのフルタイム四駆や、ESP(メーカーオプション)といった、高機能の走行装置は、3型をベースに踏襲されている。
 街乗りSUVに転向したとはいえ、実は中味は変わらずの本格オフロード性能という、奇妙なパラドックスを抱えるに至った事情は、時代の流れによる需要の変化だという。しかしそれは本当だろうか? 東日本大震災を経験し、今また東北以南のほとんどの太平洋沿岸が巨大地震の発生を示唆されている世の中にあって、優れた悪路走行性能をカタチの方からスポイルしてしまうほど、メーカーが迎合する必要はないと思うし、エスクードが世界戦略車であるというなら、それこそ災害に備える姿勢としての四輪駆動車というアピールを、愚直なまでに貫くことの方が、日本の自動車の安全と安心感として世界に掲げる答えなのではないかと感じる。

スズキ自販茨城さんにご協力いただきました。