「ちょっと横須賀まで乗せてってよ」
 というのは家内で≪「月の道」っていうオリジナルドリンクがきれいなのよ≫なリクエストによるもので、それが津久井浜のBlueMoonにあることも良く知っていた。
 BlueMoonは、「満月が1か月の間に2度巡ってくる」天文現象を意味する。家内の言う「月の道」は、満月の三浦海岸に月光が描く、夜空と海の彩りを表現した飲み物だ。
 しかし、BlueMoonは、あの≪和邇家≫の行きつけの店でもある。黙って出かけて行ったら、前回のような罰が当たるし、どんな小言大言をくらうか想像に難くない。
 って、またしても同じことを書いているこの口上。初回前々回に立ち返って和邇さんに連絡をした。9月に食えなかったスペアリブを、小春日和のいま、食いに行かなくてどうする。

   

 この時期、BlueMoonには一番乗りして確保したい窓際の席がある。
 月明かりではなく太陽光の仕業だが、窓に描かれているお店のロゴが、開店からわずかな時間、青いテーブルに影を落とすのである。
 窓際には2つのテーブルがあるが、この時期、名付けて「BlueMoon‐Shadow」は奥のテーブルだけに現れる。わずかな時間と言っても、注文した料理を堪能しているくらいの間はこれを眺めることができる。
 じっくりと煮込まれたスペアリブは箸で摘まめるほど柔らかく、骨からも簡単にはがすことができる。ガーリック醤油味とゆず胡椒味を試してみる。どちらもうまい。
 お店のマダムもスタッフもいつものように明るく対話に付き合ってくれる。地元の高校生がインターンシップでホールスタッフを学んでいる風景も和ませてくれる。

 しかしここで、和邇さんならぬあの新帝国WANIのDoctorワニから悪魔の挑戦が舞い込んできた。


 『みかん園で10kg1箱を買い出しトライアルするのぢゃ』
 
 ・・・・・なんだとーっ

 以前、つくばーど®in津久井浜でお世話になった小林さんのところにミカン箱を手配したという。新帝国め、発送料金を節約しやがったな。と、津久井の浜辺から山に駆け上がることとなった。

 小林さんご夫妻は変わらずはつらつとしていらっしゃる。しかし今年の三浦半島は津久井だけ雨が降らず、近所の農園と共同で給水車を用意し、連日終日持ち回りでみかん山に水撒きを続けたのだという。これはかなりの労力だ。

 「小粒になってしまったけど糖度は申し分ないですよ」

 その言葉にたがわず、小林さんの育てたみかんは実に甘くて程よい酸味にあふれていた。