《市販車市場を見据えた環境派》

 フランツ・ハイネルが開発し自ら搭乗するサイレントスクリーマーβは、高性能DCモーター+単結晶太陽電池の四輪駆動マシンで左右非対称のデザイン。ボディー材質に高分子誘導体C.F.R.Pを採用するほか透明パーツを使い、内部メカニックが透けて見えことも特徴。左右非対称の車体はコクピットを右サイドに配置し、左サイドのクリアパーツ内にはマシン制御のための電子機器が搭載されている。
 人工衛星による発電を光学触媒発電素子が組み込まれたソーラーチャージャーウイング経由で燃料電池にチャージする、サイバーフォーミュラ史上初のシステム。最高出力900馬力/1,300ワット、最大トルク100mkg/1,300ワットをスペックとし、最高時速438Kmをマークする。環境問題への果敢なアプローチだが、発電効率に関しては天候に左右されるというウイークポイントがある。
 動力方式により他のサイバーマシンに見られる燃焼型ブーストユニットは持たず、リニアモーター駆動の常温超電導ホイール内臓モーターに電圧負荷をかけ、これをオーバーロードさせる方法で超高速加速を実現している。



 ニセコサーキットで開催された予選リーグには、ハイネル自身は招待選手として出走し、ワールドシリーズ第一戦アメリカGP、第二戦ペルーGPにおいてそれぞれ第四位入賞、第三戦ブラジルGPで優勝を果たす。
 第四戦カナダGPまでは表彰台に上ったものの、天敵とも扱われるアメリカ人レーサージャッキー・グーデリアンとの絡みなどでリタイアも多発し、場外乱闘が目立った。しかし両名とも罵り合う以上に実はウマが合い、ハイネル設計のマシンをグーデリアンがパイロットするようになる。
 常温超電導はコスト高であり太陽光発電能力もマシンの性能を大きく左右するなど、レース仕様としては疑問の残るマシンだが、ハイネルにはそれらの技術を一般車として普及しているサイバーサイクルタイプにフィードバックし、クルマ社会の行く末を環境保全面から永らえさせようとする遠大な構想があるものと見られる。